げんさんのほっぺ

本当は自分大好きなナル君なのに現時点ではとても残念な状態のモノノフが己を慰めるために地球の片隅で目立たない戦いをするブログ

【妄想】Mという女の子

Mは普通の女の子。

と同時に働きながら大学を卒業した頑張り屋さんでもある。

しかしとても困ったことに、ここ最近はずっと無職なのだ。

普通の女の子なので働かなくてはならない。

働かなくて暮らせる女の子はその時点で普通ではないからね。

大学は優秀な成績で卒業したものの、芸術系の学部だったためか、なかなか一般企業への門戸が開かれなかったようだ。

心配した母親がMの就職先を見つけて来てくれた。

(え、芸能事務所…?)

Mは逡巡したが、背に腹は代えられない。

しぶしぶその芸能事務所に入社することとなった。

短い研修期間の後に、Mは「旧芸能3部」という部署に配属され、4人組のアイドルグループ「Z」のマネージャーを担当することとなった。

一般的な社会人経験の浅いMは、たびたび仕事上でミスを犯し、先輩社員たちに迷惑をかけるのだった。

(えーん。Fちゃんでも出来るくらいだから楽勝って思ってたのに…)


 ◆ ◆ ◆


そんなある日のこと、振付師のYがプロデューサーのKに声をかけた。

「ねえKさん。わたし今度の新曲はアシンメトリーのフォーメーションでやりたいんだけど…。」

アシンメトリー? つまり赤をセンターにしたいってこと?」

「そうなの。だからメンバーを一人増やしてもらえないかしら。」

「うーん、タレントに余力はないなぁ…でもウチの社員だったら自由に使って良いよ。マネージャーがタレントより目立つのは、ウチのお家芸だからw」

「ありがとう☆ というわけで、M、あんた明日からフォーメーション練習に参加しなさい」

「え、なんで私が…」

「おいM、お前迷惑かけてばっかで役に立ってないダロ。業務命令だ。」

(そ、そんなぁ…わたしは普通の女の子なのにぃぃぃ!)


 ◆ ◆ ◆


「ということで、今日からMにもあなた達のフォーメーション練習に加わってもらうことになったから。」

「話はKさんから聞いています。リーダーの赤です。改めてよろしくね。」

「黄です。マネージャーとしてはFちゃんより使えないからね。こっちの方が良いよ、きっと。」

「桃です。わたし聞いてないよー。もっと早く言ってよー!」

「紫です。ねぇちょっと聞いてよ。4人の中でわたしだけ事務所に推されてないんだよ。わたしと一緒に推されたいことを主張するユニット作ろう☆」

「みんな…、やっぱり言いたい放題だね…。」

こうしてMは他のメンバーと色が被らないように「緑」を担当させられることとなった。


 ◆ ◆ ◆


5人体制となったZは一時期の停滞感を払拭し、芸能界を席巻した。

ちなみにZはメンバーのわちゃわちゃ感がひとつのウリになっている。

ファンもメディアも、そうしたわちゃわちゃ感を期待しているところがある。

当然新加入したMにもそうした役割は期待されるのだが、Mは決してその輪に加わろうとはしないのだ。

そんな態度のMに参加を促そうとする声があがるたび、Mの伝家の宝刀が炸裂する。


「わたし、マネージャーなので!」

「えーなんでー?いっしょにわちゃわちゃしようよー」

「いたしません!」


Mの口からその発言が飛び出すと、まるで決め台詞を言ったかのごとくその場が沸くのだった。


 ◆ ◆ ◆


そして今日、Zは新しく建設された国立競技場のこけら落とし公演のライブに望んでいた。

ステージ下で待機する5人。

会場では6万人の観衆がメンバーの登場を今か今かと待ちわびていた。

overtureと呼ばれる序曲が鳴り始めると、会場は異様な興奮に包まれた。

カウントダウンの後に、観衆の掛け声が会場を震わせた。

「うりゃ!」「おい!」
「うりゃ!」「おい!」
「うりゃ!」「おい!」
「うりゃ!」「おい!」

程なくして、ステージ下で待機する5人の足元が動き始めた。

どうやらそのままステージの中央にせりあがる仕掛けのようだ。


徐々に拓けて行く視界の先に、Mは懐かしい光景を見た。

 


-----おしまい-----