げんさんのほっぺ

本当は自分大好きなナル君なのに現時点ではとても残念な状態のモノノフが己を慰めるために地球の片隅で目立たない戦いをするブログ

小説:『TAMARANTHUS』のための習作

ももクロに命を救われた(と解釈している)青年ヨシキと、ももクロ父親を殺された(と誤解している)科学者ハルコの恋愛ストーリーです。

ヨシキの視点で書かれた『TAMARANTHUS』サイドと、ハルコの視点で書かれた『白金台の夜明け』サイドを用意する予定です。

いつか最後まで書きあげることが出来たらいいな♪

 

----------

 神威――――。

 それは「神」の「威」を代る者――――。

 そう、それは神の威を代りて天駆ける五色の戦乙女(ワルキューレ

 不義を討つ忠勇無双の戦乙女は歓呼の声に送られて、今ぞ出で立つ父母の国(ヴァルハラ)

 勝たずば生きて還らじと、誓ふ心の勇ましさ。

----------

 ライトノベルなんかだと、主人公がヒロインと出会うシーンとかってのは、やっぱり印象的に書かれることが多いよね?

 例えばだけど、空を見上げたら唐突に昏睡状態の美少女が降って来て……とか、目を覚ましたらなぜか美少女の膝枕で、しかもそこは異世界だった……とか、はたまた存在を知らされていなかった腹違いの妹がいきなり訪ねてくる……とか、まあそんな感じ?
 でも僕とハルコさんとの出会いはそんなにドラマティックなものではなくって、居酒屋さんが舞台だったんだ。

 その日、僕はJR三鷹駅からまっすぐ南へ下ったところにある『礫(つぶて)』という居酒屋に向かっていた。このお店は居酒屋と花屋が同居しているちょっと珍しい営業形態で、居酒屋としても花屋としても、それぞれが優れたレベルにあるというところが気に入っていた。

 細い路地を右手に折れて雑居ビルの外階段を二階へあがると、その店の暖簾が見えてくる。暖簾をくぐると早速女将がいつものように人懐っこい笑顔で迎えてくれた。
ヨッシー! いらっしゃーい。あ、今日は病院の日だっけ?」
「うん」
「ん、そっか……。あ、カウンター席どうぞ」
「ありがとう」

 実はこの居酒屋の女将兼花屋の主人は僕のノフ友なのだ。三重子という名前なので、仲間内からはミーちゃんと呼ばれている。

 『礫』の店内には大テーブルがひとつと、四人掛けのテーブルがふたつある。その他に厨房の正面に6人ほどが座れるカウンターがあって、僕はカウンター席の手前側に案内された。
 カウンターの一番奥の席には『本荘』という日本酒を飲みながらノートパソコンを眺めている女性客がいた。『本荘』は秋田県由利本荘市の地酒で、極端に流通量が少ないため東京では滅多にお目にかかれないという代物だ。僕もここ最近のお気に入りで良く注文する銘柄だが、流石に今日は注文するのがためらわれた。

 その女性は目の前に置かれた緑色の一升瓶とはおよそ不釣り合いに思える程、若い娘だった。チェック柄のグレーのスーツ姿で、ちょっとヨソユキの格好に見えた。ひょっとしたら何かの会合に出席した後に、クールダウンのために立ち寄ったのかもしれないと思った。
 年齢はまだ二十代の前半だと思うが、僕が更に驚いたのは彼女の美貌だった。肌が浅黒く、エキゾティックで端正な顔立ちだった。恐らく中東とかインドあたりの血が混じっているのだろう。僕のボキャブラリーが少ない辞書からは『美人』という言葉しか探し出せなかった。

 左右に垂らした三つ編みを後ろで束ね、それ以外はふわっとしたシルエットのセミロングのヘアスタイル(こういう感じのヘアスタイルって一般的になんて言うのかな?)と、カウンターに無造作に置かれた財布や手帳が可愛いデザインのモノだったので、見た目の印象の割には結構ガーリーな趣味の人なんだなぁというのが僕の第一印象だった。

 お互いにひとりだったので僕の方は若干彼女のことを意識したんだけど、女性の方は残念ながら僕には全く関心を寄せてくれず、英字で書かれた難しそうな内容のウェブページを楽しそうに読みふけっていた。

 仕事の合間を見ては、いつものように女将が僕に他愛もない話題を話しかける。
「ねえ、『GOUNN』買った?」
「もちろん買ったよ。実はさっき病院の前に吉祥寺のタワレコに寄ってきたんだぁ」
「えーいいなぁー、私まだ取りに行けてないや」
「今日発売だしね。仕事じゃ仕方ないよ」
 その日は偶然にも、ももクロの10枚目となるシングル『GOUNN』の発売日でもあったんだよね。

 それから一時間ほど飲んだだろうか。僕は店を出ることにした。女将を呼び止め「お会計お願いします。カードで!」と言って、AEの会員証を肩口に掲げた。AEの会員証は金色で、クレジットカード各社のゴールドカードに酷似しているからこそ成立するギャグだ。
「お客様、大変申し訳ございません。当店では『Angel Eyes』のカードはお使い頂けません」
 女将にそう言われて二人で笑った。その直後、カウンター席で飲んでいた女性が何か気になったのか、こちらを振り返って僕に複雑な視線を投げかけた。

(ん?)

 一瞬、「なんだろう?」とは思ったけど、気にしないことにした。
「本日はご来店ありがとうございました。また会いに来てね。いつだって『三鷹』だから」
 あははは! ここの女将は本当にセンスが良い。僕の笑いのツボもちゃんと心得てくれている。

 現金で会計を済ませ、最後にトイレに行った。僕がトイレから戻ると、意外なことにカウンターの女性の方から声をかけてきたんだ。
「キミは……ひょっとして『モノノフ』なのか?」
 僕は一瞬怯んでしまい、「え? な、何でですか?」と回答するのが精一杯だった。そもそもこういったシチュエーションで女性から声をかけられた経験なんて無かったし、彼女の質問にネガティブなイメージが混ざっていないかどうかを咄嗟に判断できなかったからだ。
「さっき出したのはファンクラブの会員証だったんだろう? つまりモノノフなのかなぁ、と思ってね」

 僕はあきらめて正体を明かすことにした。
「そうですね。確かにモノノフです。まぁ、ニワカですけど……」
「ほう(笑)」

 なんだろう……、僕の眼には『僕』という存在が、いたく彼女の好奇心を刺激してしまったように映った。あれがファンクラブの会員証だということに気がついた彼女も、やはりノフなんだろうか?

「ひょっとして貴女も……」
 僕はその可能性が高いと判断して、必要以上に警戒を解いてしまったようだ。冷静に考えれば彼女がノフならば僕がギャラパーを着ている時点でノフだということに気が付いたはずなのに……。
 女性は僕の質問をガン無視すると、更なる質問を送って寄こした。
「質問いいかな。キミはアイドルになりたいという自覚は、すでに芽生えているのか?」

 はいぃぃぃぃ!? オイオイ、君は一体何を言っとるのかね? 確かに僕は実年齢よりも若く見られることが多いが、三十代の半ばを過ぎたれっきとした“オッサン”だぞ? それを言うに事欠いて『アイドルになりたいか?』だと。そんな訳無いでしょ、っつーの!

「あー、いや……アイドルになりたいんじゃなくって、単にアイドルの追っかけってだけです。それじゃ!」
 僕は少しだけ身の危険を感じて、彼女との会話を早々に切り上げることにした。
「いや、キミがアイドルになりたいのは『遺伝情報』に組み込まれている決定事項だ。ボクが聞いているのはその自覚がキミにあるかどうかという点だよ」

(まさかのボクっ娘かよ!!)

 まさか現実世界に生息しているなんて! 完全にアニメの設定の中にしかいない、ファンタジーな存在かと思ってたYO!

 女性は自分の質問がおかしいことに気がついていない様子で、むしろ僕が質問の意味を取り違えたんだと言わんばかりのドヤ顔で見上げてきた。
「……すみません。自覚は無いです」
 僕があきらめてその『設定』を受け入れて回答すると、彼女は満足そうに頷いた。そしておもむろに表紙に『実験ノート』と書かれたグレーの古風な大学ノートを取りだすと、僕の位置からですら見えるような大きな字で、ノートいっぱいに『11/6 無自覚な被験者と接触』と書いた。

(しかも厨ニ病かーい!!)

 いや、正直なんかスゲー怖いんですけど!

 女性は僕が感じている恐怖心などお構いなしに、そこから一方的にしゃべり始めた。

「キミが追いかけている『ももいろクローバーZ』っていうのはな、実はかなり危険な存在なんだ。彼女たちは全人類をアイドルにしようと企んでいる可能性が著しく高いと考えられる。あと数年のうちにヤツらがテーブルを叩いて全人類に無条件降伏、つまりアイドルとして生きることを迫ってくる日がやってくるかもしれないのだよ」

 反射的に『な、なんだってー!?』と出そうになったが、そんなワケあるかっ! よくある都市伝説的な感じの話かな? それにしても初対面の僕に向かって、あまりにも唐突すぎるだろう。いくら酔っているとはいえ、かなり頭のイタイ子であることは間違いない。

 恐らく彼女はこれまでにも、僕と同じような反応を何度もされてきたに違いない。僕の様子を見て一瞬落胆の表情を浮かべたが、それでも次の瞬間にはマジ顔になって僕のギャラパーの袖をつかんでこう言った。

「イエスかノーか? 受け入れるも受け入れないもそれはキミ次第――――」

----------

以上です。
それではまた、いつか、どこかで……。


#本荘 #モノノフ #ボクっ娘 #ももクロ